さて、今日はマレーシア魚市場実用辞典のその2ですが、前回に引き続きアジ科の魚を紹介したいと思います。前回はアジ科の小型魚を取り上げましたが、今回はアジ科の中・大型魚です。

しかし、前回から思いつきで始めたこの実用辞典ですが、意外に難しいものがあって正直言ってかなり苦労しています。

辞典と称するからには、魚種・魚名の同定には私としてはできる限りの正確性を期したい訳で、これまでは大体この魚はこんなところだろうぐらいで良かったのですが、仮にも辞典に載せるにはそうは行きませんよね。なのでブログに書く前に、魚の同定を再確認したい訳ですが、中には一筋縄では行かない魚もあるのです。

これが日本の魚市場ならば同定できない魚などないですよ。魚種や魚名は市場の誰に聞いてもすぐ分かる。ところがこちらの市場では、売っている側の人間でもあやふやな魚がある。例えば、今回のアジ科のイカン・ニョニョと言うローカル名のこの魚、尋ねる相手によって微妙に、いやまったく違うこともある。ある人はアンダマンアジを指し、またある人はロウニンアジやギンガメアジやマルヒラアジを指す。ローカルの図鑑も、そしてフィッシュサプライヤーの商品リストでさえも一様ではない。

さらにややこしいのは、ニョニョと言う魚の他にニュニュと言う魚もあって、二つは異なる魚だと説明する者もいるし、いや同じ魚だと主張する者もいる。

要するにここマレーシアの市場では、ヒラアジ系は全部一緒くたにニョニョとかニュニュとか言っても間違いではないのだろうと、今では思っていますが、あくまでこれは筆者個人の意見です。もしそうではないとのご指摘やご意見がおありの方は是非その旨をご教示いただければあり難く思います。

そんなわけで前もってお断りしておきたいのですが、この辞典で取り上げる魚の、特にローカル名の正確性については、マーケットの魚売り場で魚名の看板を立てて売られている魚以外はあまり期待しないで欲しいのです。いや、ここマレーシアではそれぐらい大雑把でも構わないのだと言うことでお許しをいただければと思います。(今回はイカン・ニョニョと言う同名のヒラアジだけのオンパレードですが気にしないでください。ローカルの方たちにはそれで十分通じるのだと思っています。



アジ科の中・大型魚

イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:マルヒラアジ(英名:Coastal trevally/Shortfin trevally、マレー名:Demuduk Cupakデムドゥックチュパッ)

マルヒラアジ01

マルヒラアジ02

これは、市内のスーパーマーケットの魚売り場ではほとんど見ないが、卸売市場やウェットマーケットでは良く目にする魚。30-50cmほどの魚体長だがたまに1mもの大型の似たようなヒラアジを目にすることもある。でもそれはこのマルヒラアジではなくロウニンアジと言う大型魚だ。マルヒラアジは他のヒラアジ同様に側偏(左右に平たい)し、名前の通りおでこから吻にかけて丸みがある。良く眺めると案外ひょうきんな顔にも見える。体色は概ね銀白色だがたまに黒っぽく見えることもある。刺身で食べれば脂が適度にのっていて噛みごたえもあり非常に美味。これは一押し間違いなし。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:ヨロイアジ(英名:Longfin trevally、マレー名:Demuduk Putihデムドックプティ)

ヨロイアジ10

ヨロイアジ02

たまに卸売市場で目にする程度で、その他のマーケットではほとんど見かけない。魚体長は30-50cmほど。マルヒラアジとの区別は頭部背縁の輪郭が直線状であること及び背鰭・臀鰭の軟条のうち数本が長く伸びていること。日本のリュウキュウヨロイアジとほぼ同じ。食味はマルヒラアジと同等と思われるが、未だ未経験。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:ヒシヨロイアジ(英名:Longnose trevally、マレー名:Demuduk Muncungデムドックムンチュン)

ヒシヨロイアジ01

ヒシヨロイアジ02

これもヨロイアジ同様、たまに卸売市場で目にする程度、と言うか、ヒラアジ系は同じ箱で、イカン・ニョニョとして一緒に売られていることが多いので、気が付かないことも多い。この魚の特徴は、英名のLongnose trevallyどおりに尖った吻や高い体高及びその菱形の体形にある。また、吻端が鈍く、鰓蓋上部に小さな黒斑がある。体調もヨロイアジ同様30-50cmほど。食味もおそらく同様と思われる。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:アンダマンアジ(英名:Bludger trevally、マレー名:Demuduk nyiur-nyiurデムドックニュニュ)

アンダマンアジ02

アンダマンアジ01

このアンダマンアジはヒラアジの中では体高が比較的低く紡錘形で、どちらか言うとマルアジに近い。卸売市場やウェットマーケットでも良く見かける。30-90cmほどにもなるアジ科の中・大型魚。触った感じが他のヒラアジに比して柔らかく、市場に並べられていても既に傷みが見える場合もある。身肉は他のヒラアジよりも赤みが強く血合いも濃いが、マルヒラアジなどとは異なるアジ特有の酸味と甘みがあり、鮮度が良ければ刺身も悪くない。いつか、この魚名を売人に尋ねたら、ニュニュと言った。私がニョニョではないかと聞き返したら、いやニュニュだと答えてくれた。なるほど、マレーの学名はDemuduk nyiur-nyiurなのでこれは本当かも知れないが、未だ確証はない。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:ギンガメアジ(英名:Bigeye trevally、マレー名:Belokok putihベロコップテ)

(注)こちらの学術書やサプライヤーのフィッシュリストにはこのBigeye trevallyがIkan Nyok Nyokだと書いてあるので、おそらくそれが正しいのだろうと思う。しかし、普通のマレー人たちが言うイカンニョニョはヒラアジ全体を指して言ってるようにも見えるので、あえてこの魚のみをイカン・ニョニョだと断定はしなかった。

ギンガメアジ01

ギンガメアジ02

卸売市場ではよく見る魚。体長60cm前後になる。体高はさほどでもなくこれも紡錘形に近く、目は吻に近い。尾鰭、背鰭は黒く、そしてなにより黒く直線的な稜鱗(ぜいご)が良く目立つ。また、鰓蓋の上部に小さな黒斑があり、型の小さいものは尾鰭の後縁が黒く縁どられ、不明瞭な暗色の横帯が6本前後ある。鮮度の良いものは血合いがやや濃いものの身肉がピンクでシマアジに似て刺身も非常に美味と言われているが私自身はまだ食していない。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:ロウニンアジ(英名:Giant trevally、マレー名: Belokok mamungベロコッマム)

ロウニンアジ01

ロウニンアジ02

私は以前これをマルヒラアジの大型種だろうと単純に思ってた。魚体長は軽く1mを超え、最大1.7mにもなると言う。卸売市場でもめったに見ない魚だが、刺身にすると血合いは赤いが身肉は透明に近いのだと言う。しかし腹周りの脂のたっぷり乗った身肉は白濁して旨みが強く、アジ科特有の風味がわずかに残るがとても美味とのことなので、いつか機会があれば是非食してみたいものだ。



イカン・ニョニョ(Ikan Nyok nyok)
日本名:クロヒラアジ(英名:Blue trevally、マレー名: Belokok biruベロコッビル)

クロヒラアジ10

クロヒラアジ12

これもめったに見ないアジ科の魚。ヒラアジの中でも全体的に黒ずんで見えるためにクロヒラアジと言う。魚体長は40cm前後が多い。体側には暗色帯が7~9本あり、これが全体的に黒ずんで見させている。以前卸売市場で発見し、一本買って帰ってじっくり同定した。さっそく刺身で食してみたところ血合いは赤いが身肉は透明感のある白身できれい。ただ脂はあまりのっておらずマルヒラアジより旨みは劣る。



以上、今回はアジ科の中・大型魚を取り上げてみました。もちろんアジ科の魚はこの他にもあるのですが、私がこれまで魚市場やスーパーマーケットなどの魚やさんで実際に目にした魚、つまり店で売られているもののみを書いています。次回はタイ系の魚を中心に紹介する予定です。

いやしかし魚は奥が深いですね。正直言って、この私が、このマレーシアでこれほど魚に入れあげるとは思ってもいませんでした。少ない小遣いを遣り繰りしながら、当地では高価とされる魚をせっせと買い求めてはひたすら捌いて食ってみる。これってちょっと異常な世界でしょうかね。私はちょっと危ない世界にはまり込んでいるのでしょうか。

朝早く、と言うか真夜中に近い真っ暗闇の中、危うく車で黒猫を踏んづけそうになりながらも足繁く卸売市場に通う私です。服や身体だけでなく、愛車にも魚の臭いがついて離れず、夜明け前の台所で一人魚を捌く我が身を振り返る時、いささか尋常ではないなと自嘲したりもしています。

余談ですが、今日のお昼はミッドバリーの和食やさんでした。そこは数あるミッドバリーの和食やさんでも名が通ったお店で、決してなんちゃって和食レストランではなかった筈です。

写真メニューの中から美味しそうな江戸前のちらし寿司を選んで注文したのですが、これが信じられないほどのなんちゃって江戸前ちらし。なぜかと言うとちらしの具がまるでお粗末極まりない。ネタはサーモンと白マグロがメインにゆで海老1枚など。ヒラヒラ舞い散るネタの薄さも情けないが、江戸前とは冗談かと思うほど写真とは全く異なるネタ使い、しかも白マグロとは許せない。

みなさんは白マグロってご存知ですか?これは知る人ぞ知る、当地のなんちゃって和食やさんの定番刺身(寿司)ネタですよ。実はこれ最初に聞いたときはてっきりビンナガだろうと思っていたのですが、出されたものを実際に食してみたら、身肉が白すぎることとあまりに脂っこすぎて、これは絶対ビンナガじゃないとすぐに気付いた私です。店員にコレなにと聞いたら、ホワイトツナとかバターフィッショだとか言う。え、えーっ、おい、そりゃ違うだろう?、

改めて調べてみたら、これ日本じゃ販売と食用が禁止されているバラムツかアブラソコムツと言う深海魚じゃないの?なぜなら身肉の白さと脂っこさは普通じゃなくて、他にはこんなの見当たらない。そうだとしたら、これ、少し食べる分にはいいが、たくさん食べたらその脂が体内で消化されずに後で大変なことになるらしい。でも食感がまるで大トロのようなのでなにも知らない人は白マグロも結構旨いじゃないかと騙される。

なので私はそれ以来、白マグロと称するものを刺身や寿司で出す店は「江戸前」ではなく「左前」の店だと思ってる。店が左前なので高価な本物の刺身をネタに使えず白マグロのようなフェイクものを出すのだろう。

そう言えば、お昼時だと言うに店はガラガラ。ちょっと前まで大勢の客でにぎわっていた店なのに、あぁ、この店ももうダメなのか。。それにしても、朝に紅顔ありて夕べに白骨となるじゃないけれど、なんと回転の速いこの業界だこと。白マグロを出すぐらいならなぜに安価な地魚を使わないのだろうと、ここでも不思議に思うひねくれ団塊なのでした。

以上、今日はこれでお・し・ま・い。


スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://ginjo777.blog.fc2.com/tb.php/331-d4389577