突然ですが、今回から何回かに分けてマレーシア魚市場実用辞典(仮称)を書いてみます。

私は恥ずかしながら、年を経るごとにますます食欲旺盛となり、肉も魚も、やさい・・・・・もなんでも好んで食べるのですが、ご承知のように最近では魚、特に生魚(刺身)には意地汚いほどの思い入れがあります。

しかし、当地のマレーシア人たちにはなぜあんな生臭いものを生で食べるのかと不思議がられます。それもその筈、彼らのほとんどは生まれてこの方、生臭い魚を煮る・焼く・揚げるなどしてしか食べたことがなく、鮮度の良い魚はなんの臭いも発しないと言うことを知らないのです。もっとも、さもありなんです。最近でこそ流通が進歩したせいか、鮮度の良い魚がここKL内外の市場でも入手できるのですが、昔はとてもこのようではなかったでしょう。

でも流通が進歩したと言っても、日本のコールドチェーンのような低温流通システムはまだまだのようで、例え産地直送の卸売市場と言えども、すべての魚が新鮮とは限りませんし、市場側も魚を生で食べることを前提にしていないため、鮮度管理が十分ではなく常温で並べられているうちにみるみる鮮度が落ちていくのです。当然、この魚は生(刺身)で食べられるか、などと質問してもいい加減な答えしか返ってきません。

そこで鮮度の見極めは自己責任で、となるわけですが、その前に、果たしてこの魚が刺身で食して旨い魚なのかどうかとか、これは何科の魚でなんと言う名前なのだろうと大いに気になるわけです。

私も最初のうちは大いに悩みました。売られている魚種が当然ながら南方系ばかりで、日本の魚市場、特に見慣れた関東以北のそれとはまるで違います。それに市場のほとんどでは周辺国からの外国人労働者が多く、英語はおろかマレー語でさえきわめてブロークン(だからBahasa Pasarと言う)でなかなか意思の疎通が難しいのです。

おそらく、マレーシアに初めて来られた多くの日本人の方がそう感じていらっしゃるのではないでしょうか。

私は、これまでも市場で売られている様々な魚を見て、触って、臭いをかいで、これはと思う魚は買って持ち帰り、写真データなどを照合しては魚種や魚名の識別に多くの時間を割いてきました。まさかマレーシアに来てこんなことをするとは思ってもいなかったのですが、元々市場巡りは好きなので苦にならないどころか結構楽しいのです。金はないが時間だけは売るほどもある定年後人生に乾杯です。

でもその際に気づいたことは、マレーシアにはこれと思う実用の魚図鑑がないことです。学術目的の専門書はあるようですが、市場で売られている魚を生で食べたいと思う私のような人間にマッチするものがどこを探しても見当たらないのです。

そこでこのひねくれ団塊は考えました。だったら自分で作れば良いではないか。それも立派なチャレンジになる。もちろん自分自身の知識・経験の備忘録にもなるし、かつ同好の方たちの参考にもなるだろう。

ただし、これはもちろん飽くまで専門家でもないど素人の私の限られた知識と経験によるものでまったくの趣味の範囲です。すべてが私自身の価値観と味好みによる独断に基づくもので、その内容の正確性を保証するものでは決してありません。、

そんなことを承知のうえで参考情報としてご覧いただければと思いますが、まあ、長々とした能書きはこれぐらいにして本題に入ります。

辞典は何回かに小分けして記述します。もちろん当地の市場で売られているすべての魚を網羅できる筈もありませんが、私が市場に通い識別と食味が確認できている魚から順次に記述して行きたいと思います。

と言うことで、第一回はとりあえず、マレーシアの魚市場でよく目にするいわゆる大衆魚の小型のアジ科(一部サバ科)の魚から初めてみます。



アジ科(一部サバ科)の小型魚

最初にアジ科(一部サバ科)の新鮮魚の見分け方です。これはどの魚にも共通していますが、腹を触って硬いもの、体表が輝いているもの、鰓(エラ)が鮮紅色のもの、目の色は澄んで黒いものが良いと言われています。ただし、目が白濁していても鮮度の良いものもありなかなか難しいのです。

イカン・セラー(Ikan Selar)
日本名:マテアジ(英名:Yellowtail scad、マレー名:Selarセラー)

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これはどこの市場でも普通に見かけるローカルにも人気の魚。一見マアジのように見えるが実はマアジではなくマテアジ。体長20-25cm。体側に10本ほどの薄い横縞があり、稜鱗(ぜいご)はメアジ同様尾鰭近くの直線部のみだが、メアジよりはやや長い。キロ15-30リンギ、売られている市場や魚店によって値幅が大きい。東南アジアでは主要な食用アジとして多く獲れるが日本では稀。食味は刺身も焼きもマアジに比べて格段に落ちる。特に刺身は脂がほとんどのっておらず旨みもない。フライか唐揚げがマッチベター。




イカン・セラー・クニン(Ikan selar kuning)
日本名:ホソヒラアジ(英名:Yellowstripe scad、マレー名:Selar kuningセラー・クニン)
(註:”クニン”とはマレー語で”黄色”のこと)(以下同じ)

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体長15-20cm。これも市場でよく見るアジ科大衆魚の代表選手。マテアジに比してひと回り小型のものが多い。体側の明瞭な黄色の縦帯(イエローストライプ)と鰓蓋(えらぶた)の比較的大きな黒斑が特徴的。テルメアジよりもひと回り小さく、体側のイエローストライプが目の上部から始まる点で区別できる。刺身も焼きもマテアジよりはマシだが小さすぎて捌きが面倒。キロ10-15リンギ程度で安価。



イカン・ロロン・クニン(Ikan Lolong Kuning)
日本名:テルメアジ(英名:Ox-eye scad、マレー名:Lolong kuningロロン・クニン)

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テルメアジ

体長22-25cm、セラー・クニンよりひと回り大きいものが多い、市場や魚店ではセラー・クニンと混在して売られていることもある。体側のイエローストライプが目の後ろから伸びていることで、セラー・クニンと区別できる。目が大きくイエローストライプのないものはメアジにも似ているが、側線湾曲部の鱗数が少なく、その後方の稜鱗(ぜいご)の直線部がメアジと比較して明らかに長いが柔らかい。食味も価格もセラー・クニンとほぼ同じ。マテアジよりはマシだがマアジに比べれは落ちる。



イカン・マタ・ブサー(Ikan Mata Besar)
日本名:メアジ(英名:Bigeye scad、マレー名:Lolong mata besarロロン・マタ・ブサー)
(註:マレー語でMataは目、Besarは大きい)

メアジ

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体長22-30cm。この魚も当地の市場の常連魚。目が大きく、体高がちょっと高く側扁(左右に平たい)している。稜鱗(ぜいご)は尾鰭近くの直線部のみで短かい。体側に黄色の縦帯(イエローストライプ)があるものとないものがあるが市場では圧倒的にないものが多い。鰓蓋を開くと、肩帯下部に突起がある。食味はマアジに比べてやや落ちるが刺身も焼きもマテアジよりは美味。キロ10-18リンギ程度。



イカン・チンチャル(Ikan Cencaru)
日本名:オニアジ(英名:Torpedo scad、マレー名:Cencaruチンチャル)

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体長25-45cmと他のアジ科大衆魚よりひと回り大きいものが多く、黒っぽく見える。英名のTorpedo(魚雷)は言い得て妙。目は吻にとても近い。稜鱗(ぜいご)は一直線に体長の半分ほどあり大変硬く、切り取る時は要注意(私は何度かこれで指を切った)。尾柄部は長く細い。価格はキロ8-10リンギ程度でアジ科の中では最も安価。身は赤みが強いのでローカルには好まれないが、鮮度が良ければ刺身は美味。でも焼きは身も皮も硬くおすすめできない。



イカン・マボン(Ikan Mabong)/イカン・ケンボン(Ikan Kembong)
日本名:グルクマ(英名:Indian mackerel、マレー名: Mabong/Kembung borekマボン/ケンボン・ボレ)

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これはアジ科ではなくサバ科の魚。市場などではアジ科の大衆魚と同じ区画で売られている。普通、体長25-35cmでサイズ的にもちょっと見にはアジ科の魚と間違えてしまうが、型の大きいものはやっぱりサバだと識別できる。触った感じがアジ科よりも柔らかい。足が速い魚なので余程鮮度が良いものでないと刺身は無理。鮮度落ちの場合は二枚に下ろし振り塩にして数時間ほど寝かせた焼きが旨い。キロ15リンギ程度。

出典: 
ぼうずこんにゃくの市場魚介類図鑑
WEB魚図鑑
Fish Species Identification Guide in Malaysia
Southeast Asia Saltwater Fish Identification
Saltwater fish species of Malaysia and SEA



以上、今回の第一回魚市場実用辞典はここまでとしますが、ここで実用お魚TIPをひとつ。サバ科の魚と言えばマサバです。旬のマサバは刺身にしても、しめ鯖にしても美味しいし、ふっくらとした塩焼きもたまらないですよね。でもここは南国マレーシア、近海で獲れる生サバなどあろう筈もありません。

しかし当地の日本食レストランなどでは結構美味しいサバの塩焼き出してるし、あのサバはどこから来ているんだろうと、最初はちょっと不思議に思い、あちこちの市場を探してみましたがどこにもないんですね。

でもいろいろ調べるうちおよその見当がつきました。こちらの方たちが好んで食べるサーモンも、塩焼きが美味しいサバも、ほとんどがノルウェーからの冷凍輸入で、国内に専門のサプライヤーがいくつもあるのです。以前、サーモンのサプライヤーを訪ねる機会がありましたが、それはそれは大きくて立派なサプライヤーさんでした。。

そうかレストランや、モールの魚やさんで出しているサーモンやサバは、こんなサプライヤーを通じて入ってきてるんだと、その時知りましたが、こんなサプライヤーさんは、例えば私が訪れたユーロ・アトランティックと言う業者さんは、数がまとまれば私たち一般の消費者にも売ってもらえるのだそうです、数がまとまれば、、ですけど。

しかし、もっと気軽に美味しいサバを買えないものかといろいろ探し回りました。その結果、TESCOにはあるにはあるのですがクォリティがよろしくない。NSKではめったにお目にかかれないし、その他の小さなスーパーでは売ってない。卸売市場にはもちろんない。

でも意外なところで美味しいサバを見つけました。それはTTDIの魚やさんです。最近まで気が付かなかったのですが、ノルウェーサバの看板もありましたね。そこでは店頭に出てなくても裏の倉庫に冷凍のままストックしてるらしく、言えば出してきてくれるのです。値段がTESCOよりもかなり高めだったので最初は躊躇したのですが、買って帰って焼きにしてみてビックリ。

こりゃ、日本のマサバとまったく変わらない。脂がのって、身がふっくらとして実に美味。もちろん刺身やしめ鯖にはできないが、塩焼きはこれで十分。と言うことで、今、我が家の冷凍庫には切り身にしたノルウェーサバのパックがたくさん入ってます。(もちろん各種の刺身柵もその他の魚パックもたくさんたくさん入っています)

ごめん、こんなこと書いてたら、またサバの塩焼きが食べたくなりました。今晩の夕食は、煙の出ない日本製フィッシュロースターで脂ジュージューこんがり焼いたノルウェーサバをビールの友にしようなんて、密かに考えているひねくれ団塊でした。

ではまた。。(魚市場実用辞典はこれからまだまだ続きます)

追記(2017.3.7)
マレーシア魚市場実用辞典で紹介する魚の価格(リンギ/キロ)はあくまで参考価格です。それぞれの魚の価格は、魚の型(大きさ)、鮮度、時期、売られている場所などによって大きく異なることをあらかじめご了解下さい。

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