若いときは、花や草木にはまるで興味がなかったものだが、
最近はなにか、やはり年のせいかも知れないが、不思議なことに
いいなと思うようになってきた。

特に、山をやるようになってからのことなのだが、
以前にはまったく考えられなかったことだ。

空気の澄んだ高い山に登り、汗ばむ肌に冷たい風(特に夏)、
辺りを彩る山の花たち、それに冷えたビールがあれば最高。
大げさかも知れないが、ああ生きてて良かったと思うのだ。

自他共に認める仕事人間で、癒しとか、潤いとかには、
縁のない世界で、強がって生きてきたような気がするが、
現役を離れ年を取ると、癒されたいとか、潤いたいとかの
気恥ずかしいワードを平気で口にし、そうありたいと思う
自分にわれながら驚いている昨今なのだ。

そんなあるとき、山と渓谷社の「新・花の百名山」を読んだ。
ぱらぱら捲ると秋田駒ヶ岳が目についた。
そう言えば、この前あるテレビ番組でこの山をやっていた。
7月の秋田駒ヶ岳は花で埋まるそうだ、癒しの山なのだそうだ。

秋田駒ヶ岳と言えば田沢湖だ、車で3、4時間ぐらいだろう、
そう遠くない、それに毎日が日曜日のこの身、時間だけはたっぷりある、
行って見るか、とさっそく予報をチェックした。
同行者はmy better half、花の山と聞くと食指が動くらしい。

予報を頼りに、梅雨の中休みのピーカンを狙った。
前日推進(最近遠方の山はすべて前泊)翌日登山の計画で
田沢湖高原温泉郷のアルパこまくさにて前泊した。

そうか、ここからちょっと先に行くとあの有名な乳頭温泉だ。
じゃあ、帰りにそっちも寄ってみるかと即決めた。
自由空間人間、この気楽さがたまらない。

夕方から雲がとれ、晴れてくる予報であったが、夜いつまでも
雲がとれず、それどころか雨もきた。不安はあったが、
それでも、明日は朝からピーカンのハズと信じていた。

ところが朝になると辺りは濃いガスに包まれ、なにも見えず、
雨が降ったり止んだりで、とてもがっかりの空だった。

どうも最近の予報はあたらない、週間予報などあたったこともない。
もちろん高気圧どっぷり圏内ならば誰でも、いやサルでもわかるが、
今日のような微妙な気圧配置の場合は、週間どころか翌日予報すら
当たらない。一体どうなっているのだ、この国の気象庁は!!などと
腹を立ててみたところでどうにもなるものでなし、
諦めて、雨登山の支度を整えた。

ここから八合目駐車場まで、マイカー規制のため、
皆さん、乗り合いバスにて移動なのだ。
片道600円、安くもない運賃だが、早朝から結構乗る人がいるものだ。
ひょっとして、これ、このバス会社のドル箱路線だったりしてね。(笑)

30分ほどかけてバスは細いくねくね道を登る。
八合目駐車場に着くと、えっ、なにこれ?いっぱい車が停まってるじゃん。
そうか、乗入れ規制って時間制限なんだ、なんだよもっと早く気がつけば
昨夜のうちにここに来たのにと思ったが後のまつり。

ここでも、これから登る駒ヶ岳もなんにも見えず、
癒しの山かはたまた幻しの山か、ここまで来たら、
もう登るしきゃないでしょう。

登山口から駒ヶ岳最高峰の男女岳(おなめだけ)1637mまで標高差約340m、
ちんたら歩いても楽勝だ。そんなに時間もかからない。

登山道は良く整備されていてまるで遊歩道のよう。
小雨の中、ちょっと歩くとさっそく山の花たちが出迎えてくれた。

トップバッターはバラ科のマルバシモツケ。
葉を伝う雨滴がみごとに絵になる。

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そして、鳥海山でもよく見るウラジロヨウラク。
葉の裏が緑白色、花は白っぽい淡紅色の壷型下垂。

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妖艶なベニバナイチゴの花。
夏には真っ赤な実をつけ、喉の乾きを潤してくれる。

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鳥海山の鳥海アザミとよく似ているが、
これはオニアザミ。

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雨の登山道でも華やかさが際立つハクサンシャクナゲ。
この登山道よりも、焼森からの下山道に多く咲いていた。

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そして花の形が半鐘に似ているミヤマハンショウヅル。

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これはオノエラン。よくよく観察してみると実に気品のある白花だ。

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ミヤマダイコンソウの大群落。
あたり一面黄色のお花畑。晴れていたらすごいだろうな。

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まだ数は少ないが、ダイコンソウの中に開花準備中の
ニッコウキスゲの茎が目立つ。

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そしてチングルマの群生。この前の朝日連峰でもそうだったが
ここでも今が盛りのものや、すでに花が落ちて綿毛に変身中のものなど、
日当たりによっていろいろあるようだ。

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いつ出会っても妙に心が弾むミヤマウスユキソウ。
今日は雨に濡れたウスユキソウ、この淡さが余計にたまらない。

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そして、この時期の秋田駒ヶ岳、花の山を代表するエゾツツジ。
ピンクよりやや赤みが濃い、とてもきれいな花だ。
まさに癒しの花だと思う。この花、これから先のいたるところに
咲いていて、登山者を癒してくれる。素晴らしい花だ。

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焼森の砂礫地にて開花準備中のエゾツツジ。
これもいい。

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さらにエゾツツジとチングルマ綿毛軍団のツーショット。

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白い貴婦人、カラマツソウ。グレーの空でもこの白は映える。

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ウサギギクだが数は少ない。
ダイコンソウの黄色に負けてる感じ。

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雨に煙るコバイケイソウ。
ほとんどの開花はまだ先だと思うが、
一面の葉の群落をみると、この辺りには
真っ白なコバイケイソウが咲き乱れるのかも。

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ガスでよく見えないが、男女岳と男岳に挟まれた阿弥陀池。
しかしここの木道はすごい。よく整備されている。

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木道の先の雪渓近く、
チングルマの群生に紛れるように咲くヒナザクラ。

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横岳途中から見下ろす阿弥陀池避難小屋と池、
それに木道、雪渓も見える。

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横岳から焼森経由にて下山したが、
ほぼ焼森頂上の砂礫地に咲いていたコマクサ。
群落と言うより点在していると言うほうが正しい。
このコマクサ、横岳から小岳に通じる大焼砂に群生しているらしい。

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コマクサやエゾツツジとともに、
この山を代表するタカネスミレだが、花期は過ぎて葉のみ。

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これは砂礫地のイワブクロ、開花準備中。

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下山途中から雨もあがり、ガスも晴れて
良く見えるようになった。
これは下山後の八合目から見る駒ヶ岳(男女岳)。

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上では眺望もなにも、ガスの中でなにもみえなかったが、
足元に咲く山の花たちには大満足した。
標高差もたいしたことなく、登山というより、
遊歩道のハイキングという感じだが、花の山は本当だった。

以上、秋田駒ヶ岳の花めぐりはこれで終了。
ここから先はおまけのブログ。

ここ田沢湖高原温泉郷からさらに10分ほど車を走らせると、
山の奥まったところに乳頭温泉郷、鶴の湯温泉がある。

テレビや雑誌でなんどもお目にかかるこの入り口だが、
なにか日光江戸村を思い出す。

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門をくぐり管理棟に入ると、玄関先にはこれ。
あぁ昔懐かしい冷やしビールや冷やしジュース。

そういえば、昔、小学生のころ、父親の生家の山形県新庄市泉田(当時は村)、
よく母親に連れられて行ったものだが、その家の中の流しや洗い場が
こんな風だった。夏には大きなスイカやトマトやきゅうりが冷やしてあって
すごくうまかった。なぜか胸キュンの思い出なのだ。

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日帰り入浴券500円也を購入し温泉棟へ。

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露天風呂や内湯などあるが、湯はそれぞれ独立していて
中で行き来ができない。これはその中の混浴露天風呂。
混浴と言っても名ばかりで、その証拠には、女性専用の露天風呂もある。
しかし乳白色の湯はいい。硫黄の香りもまたいい。

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これは内湯の脱衣場。

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内湯の内部、撮影禁止だが誰もいないのでちょっと失敬。

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かの有名な乳頭温泉、これも話のタネになると思いながら後にした。

そして帰り道、アイスクリームの看板に釣られて
立ち寄った田沢湖近くの「山のはちみつ屋」。

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これが大正解だった。
そこらのグルメ記事でもあるまいし、お店紹介など考えもしなかったが、
とてもおいしく、サービスも大変良かったので特別に載せることにした。

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なにが良かったかと言えば、
はちみつフルーツ酢やはちみつジャムなどの試飲、試食コーナーが良い。

何十種類もの試飲・試食ができて、しかもどれも唸るほどうまい。
それだけで大満足なのだが、看板のはちみつアイスクリーム、これがいい。

ただ、アイスクリームに混ぜるマンゴーや木苺などのフルーツのチョイスが
良く判らず、お勧めはこれです、と言ってもらった方が良かったのになと
思いながら食べたのだが、よく見ると、お勧めのフルーツ選びの絵が
手元にあるではないか、いやこれは大変失礼しました。(笑)

田沢湖近くに行かれたら是非立ち寄ってみて下さい。

これ、生まれて初めてのお店紹介ですから。

HPのリンク

http://www.bee-skep.com/
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今月初めに親しい先輩の入院見舞いの記事をアップしましたが、
先週の木曜日、突然、まさかの訃報を受けました。

あれから、まだ3週間ほどしかたっていないのに、
驚き、呆然とし、そしてとても悲しくなりました。

3日後、先輩のご自宅近くの東大和市での告別式に
参列してきましたが、先輩のそのお顔はとても無念そうでした。

浄土真宗大谷派の導師の、
朝(あした)には紅顔ありて夕(ゆうべ)には白骨となれり、
とのお言葉に、涙が彷彿として止まりませんでしたが、
人間なぞ、なんてはかない存在なのだろう、
誰しも、ゆうべにはこうなるのだと、
この世の無常さをあらためて思いました。

そして、慌しい東京からのとんぼ返りの帰途、
なぜか無性に山が恋しくなり、
そうだ、追悼登山に行こうと決心したのです。

自宅に戻り、早速予報をチェックして、
追悼登山であれば、いつもの鳥海山ではなく、
眼下に厳かな大鳥池を臨む、朝日連峰の北端高峰、
以東岳にしようと決めました。
実はこの以東岳、数年前に、大朝日からの縦走を完遂できず
大変悔しい思いを残していた山です。

人間なんてかよわいものだ、誰がいつなんどき
この世から消え去ったとしてもなにも不思議ではない、
寧ろ消えてなくなることがあたり前なのだ。

旅立った先輩を山で一人静かに想いたい、
併せて数年前の悔しい思いを晴らしたい。

以下は、そんな1泊2日の追悼登山の書きなぐりです。


朝5時に自宅を出て、泡滝ダム傍の登山口まで約2時間弱、
と計算していたが、まだ残雪が道路を塞いでいたため、
最奥地点まで乗り入れできず、このため7時半の登山開始となった。



大鳥川沿いの登山道は、まだいたるところで雪渓が残り、
中には土砂崩れが道を塞いでいたりして、少々難儀するところも
あったが、前後に人の気配はまったくなく、ただ雪解けの轟々たる
水音のみで、黙々と歩き続けた。



土砂崩れです。まだ新しいものですね。



でも、この土砂崩れは、翌日の下山時にはもう修復工事がなされてました。
たまたま、その日が登山道整備の計画日だったのかも知れませんが、
いつもながら関係者のご努力にはまことに頭がさがります。



登山道を塞ぐ雪渓の渡りです。
踏み抜かないように慎重に渡ります。



1時間ほどで冷水沢の吊り橋に来ました。
沢を渡る風もまだ冷たく心地よい歩きです。



そしてまもなく、大鳥コースの第2の吊り橋、七ツ滝沢です。



沢の流れを見ているだけで、心が洗われます。
まだ周りに人の気配はまったくありません。



七ツ滝沢から本格的な登りが始まります。
突然、道を塞ぐ大きな倒木が現れました。



でもここも、翌日の下山時にはこのとおりです。
本当にお疲れ様です。



以下、登山道の側で見た花たちです。
先ずこれは、キバナノコマノツメ、ところどころに群生していました。



自宅の庭にもあるチゴユリかと思いましたが、
この花の形やグラデーションの色合いはチゴユリではなく、
ホウチャクソウです。



これはサンカヨウ。このコースのいたるところ、特に日陰や湿地に群生してました。



そして、登山開始から約3時間、午前10時、中間目標点の大鳥池到着です。
ここまでまだ人に会っていません。もちろん、目の前のタキタロウ小屋にも
人の気配はありません。結構汗もかいたので、ここで着替えと腹ごしらえです。

ところで、今日はまさに追悼登山に相応しい日のようです。
7月に入ると本格的な夏山登山が始まるでしょう、そうしたら登山道や山小屋は
人で溢れ、こんな静かな山旅はとても無理だと思います。
そうか、例の登山道整備もそのためかと、今、気がつきました。



池の畔に立つタキタロウ小屋です。
冷たく豊富な水場は疲れた身体をリフレッシュしてくれます。



ここから先は始めての道です。
なので迷いましたが、結局体力を考え、さらに時間はたっぷりあるので
オツボ峰コースを取りました。



ここからしばらく辛い急登が続きますが、傍らで見つけたイワウチワの白花です。
知りませんでしたが、白は珍しいのだそうです。



4、50分ほどで尾根に出ました。
ここから対面の稜線上にゴール地点の以東岳とその右側に
ちいさく以東小屋も見えました。



おっ、ついに現れました、かの有名なヒメサユリです。
これ以降、コースのいたるところに咲いていました。



これはツマトリソウです。
可憐でとても可愛い花です。



これから稜線歩きが始まります。
気温が上昇してきましたが、渡る風は冷たくて最高の稜線歩きです。



チングルマとこれから歩く遥かなる稜線です。



なんと、もう綿毛に変身中のチングルマです。



チングルマの群生ですが、一面黄色に見えるのは白の花びらよりも
真ん中の大きな黄色の雌しべや雄しべが目立つからだと思います。



彼方に見えるのは月山1984mです。



ハクサンチドリです。夏に鮮やかな花です。



これは、鳥海山にもあるアオノツガザクラ。



最終目標地点近く、ミヤマキンポウゲと下方には大鳥池です。
われながらベストショットだと思うのですが、、、



和製エーデルワイスのミヤマウスユキソウ、
あちこちで群生していました。大好きな高山植物のひとつです。



そして、ついに以東岳山頂1771mに到達しました。
登山口の標高は約500m弱かなと思うので、標高差1300m程度の登山でしたが、
いやいや結構な時間がかかりました。距離も結構あったのだとおもいます。
周りに人もいなかったお陰で、しばしば気ままなロング休憩も入れてのことですが、
もう午後4時です。なんと9時間ですよ。



頂上から眼下に大鳥池を見ながら、
しばし追悼の瞑想に耽ります。



瞑想を終え反対側に朝日連峰の主稜線を望みます。
数年前は、あの途中で下山したのです。



そして、以東小屋です。
頂上から少し下ったところに立つ、こじんまりとした小屋です。



もちろん、小屋には誰もいません。
管理人さんは夏山登山が始まる来月からなのでしょうか、
とにかく、今日は、超ラッキーなことに、たった一人で
この小屋を独占のようです。
悠々として、自炊の準備にかかります。



小屋から眺める日の入りです。
厳かな大鳥池と併せ幻想的な眺めです。
これで追悼登山の目的が果たせたような気がします。



翌朝、6時に下山開始、今度は直登コースを下ります。
思ったとおりのきつい勾配が続き、膝を痛めないように慎重に下ります。
途中、これは珍しいイワカガミの白花を見つけました。



きつい下りを2時間、その後大鳥池の縁辺を辿り、岩場や沢を
上り下りする少々ラフなコースをゆっくり歩きました。
穏やかな大鳥池の水面が心を和ませてくれました。



突然の先輩の訃報に、心が騒ぎ落ち着かない日々でしたが、
これでなんとなく気持ちの整理がついた気がします。

途中、豊富にある水場の冷たい水で、のどを潤しながら、
一人静かに山を下りてきました。