引越しについて考えた。長い人生、誰でも一度や二度の引越しは経験するのだろう。
ご多分に洩れず私も過去何度も引越しを経験した。若い時にはたいして苦にもならず、
寧ろ楽しいことでもあった。だが年をとるに連れ、所帯道具の数も増えるとだんだん
苦になってきて、それは決して楽しいことではなくなった。

今まで一番の引越しは、やはり埼玉からここ山形にUターンして来た時だったろうと
思う。なにが大変だったかと言うと、引越し荷物の数が多くてその整理や梱包などが
大変だったのと、これから始まるであろう未知の生活に対する不安、と言っても、
私にとってはUターンなので、決して未知の世界ではないのだが、それでもやはり、
老父との新たな暮らしや、いちから出直しとなる新たな仕事への不安は半端でなく、
それらはかなりの精神的苦痛であった。

さて今回のことである。今回は海外引越しである。しかもいろいろな事情により、
止むを得ずこの自宅を処分(売却)しての引越しとなる。
それはそれは大変なんてものじゃない。前回引越しの何倍、いや何十倍もの大変さ
を感じている。父母から受け継いだ家財も合わせ、その数や種類は膨大であり、
それらの仕分けや処分はとてもとても一朝一夕にできるものではない。

まして今回は海外引越となると費用もかさみ、引越し業者の選定も難しい。
それだけではない、国内に残置する家財の保管やお墓の移転、その他もろもろの
諸手続きなどなど、数え上げればきりがなく、それを抜けなく期日までにすべて
こなさなければと考えると、苦痛以外のなにものでもない。

まだ先のことと考えていたマレーシア引越しDデーもあと一月半あまりとなり、
いよいよ尻に火がついた。若い時には楽しいことでもあった引越しが、今や苦痛と
なり、それでもなんとしてでもやり遂げなければならない逼迫した状況なのだ。

しかしいつも思う。この逼迫した状況は他人に与えられたものではなく、自らが
選んだ道なのだ。ならばもう少し余裕を持って処していきたい、だが頭も身体も
立派なシニアとなり、なかなか思うようにすすまない。イラつくこともある.

そんな時、過去もそうであったように鳥海山が癒してくれる。

鳥海山が傍にある。毎日気ばかりあせって遅々として捗らない、こんなときには、
そうだ、鳥海山だ、そう思ったら居ても立ってもいられない。

このところ不安定であった天候もようやく回復した。
よし行こうと朝5時に決心し、超軽装備にて山に遊んできた。
今日は、私にとって恐らく最後の鳥海山(ではないかも知れないが、そう考えると
山がとても愛おしくなる。)の山旅レポートである。

ルートは、今まで一番慣れ親しんだ滝の小屋ルート。
ここは、鳥海高原ラインのスタート地点である大台野牧場横。
日の出まもなくのため真横から朝日が射している。
冬も春も夏も秋も、この大台野牧場から私の山旅は始まる。

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鳥海高原ラインの終点駐車場、つまり登山口の真下にあたる地点からみる鳥海山。
ここは、草もみじがきれいなところ。朝日に映えてヌマガヤなどの草が光る。

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登山口の案内板だ。最後だと思い、初めて撮った。

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まもなく、滝の小屋にでる。ここは、山スキーでもしばしばお世話になった。

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これは冬場の滝の小屋であるが、あたり一面ガリガリに凍りついた氷の世界。
吹雪でなにも見えなくなるが、視界が開けた一瞬をついてのショット。
なにもかも雪の下のこの辺り、唯一すっくと建つこの小屋のなんと頼もしいこと。
幾度助けられたことか、今となればすべてが愛しく懐かしい。

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滝の小屋を後にして八丁坂を登る。
今年の鳥海山の紅葉は、例年よりもかなり遅いのではないかと思う。

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八丁坂の登り。この八丁坂、雪の消える7月には花が咲き乱れ、
その美しさは見事なものだ。

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今年の紅葉は遅い。紅葉の遅い早いはなんで決まるのだろうか。
もちろん日照時間や昼夜の気温差などの気象要素がそれを左右するのだろう。
余談であるが、近くの月山の方が紅葉の身頃はいつも早い。
鳥海山よりも南に位置しているのにと不思議に思う。どんなメカニズムなのか、
余裕があれば調べてみたいものだ。

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そして、ほとんど汗もかかず(夏場は結構汗だくになる。)、河原宿に到着した。
ここから見える鳥海山名物の心字雪(万年雪)はまもなく消え入りそうに小さく
見える。下の写真と比べて欲しい。

でも、ここからはちっぽけに見えるが、実際はまだかなりのボリュームである筈だ。
この時期にあれぐらいと言うことは、今年は消えずに残る。そう思った。
鳥海山の万年雪、子供でも知っているフレーズであるが、近年は地球温暖化の影響
なのかその存在が危うくなってきているそうだ。

今までもなんどか完全消滅している。あと何年、いや何十年か経つと、鳥海山の
万年雪はなくなる。そうなるとどうなるのだろう。地元には万年雪や氷河と銘打つ
産品が山ほどあるのにと、ふと思ってみたりもした。いや閑話休題。

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これは、先のブログにアップした夏場の河原宿だ。
上部雪渓からの冷たいせせらぎが流れ、雄大な鳥海山とその大雪渓や小雪渓などが
目を楽しませてくれる。ここに居るだけで癒される。

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せせらぎもほとんど乾き、夏場の濃い緑もほとんど茶や黄色に
変化し、鳥海山の秋を感じさせる。夏場咲き誇っていた数々の高山植物も
ほとんどが枯れ落ち、今や草もみじの一部を成している。

そんな中、エゾオヤマリンドウだけがまだ頑張っていた。
滝の小屋の上部でも見たが、恐らくこの花が最後なのだろうと思う。

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河原宿からさてどちらに行こうか迷った。
まっすぐ外輪山に向かうのか、いやここから左に折れて、月山森・千畳ヶ原方向に
向かうべきかである。

しばし考えて、今日は左に折れることにした。
ここまでの鳥海山の紅葉は思ったほどではないが、千畳ヶ原の草紅葉はどうだろうか、
それを確かめに行くことにした。

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途中、延々と続く整備された木道と目に鮮やかな草紅葉である。
前後に人影は見えず、実にいい。肌にあたるそよ風も心地よく、
まさに癒しの山旅である。

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途中、月山森分岐でどうしようか考えたが、月山森には帰りに登ることにして
このまま幸次郎沢へと直進した。千畳ヶ原が見えてきた。

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だんだん笙ヶ岳や御浜方向が近くなってきた。
一面、色づいているものの、まだ本物ではないと思う。
このまま進む。

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幸次郎沢に下りる途中のショットだが、陽の光の射し具合によって
山肌は刻々と変化する。いつも思うことだが、紅葉の見え具合いなどは、
その絶妙なタイミングに左右されるのだと思う。
特に陽のあたり具合はとても重要で、その入射角などによっても見え方は
大きく異なるのだと思う。

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幸次郎沢上部の道標。

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そしてこれが幸次郎沢上部から見た千畳ヶ原。
千畳ヶ原名物、金色に輝く一面の草紅葉、まだまだ本物ではないような、
あとちょっとかなと思う。

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千畳ヶ原の右手斜面をズームインしてみたが、結構彩り鮮やかになっている。

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でも結局、幸次郎沢は、前日の雨で少し水が出ていたのと岩場が濡れていたので
下まで降りることを諦めて戻ってきた。
これは、月山森(1650m)から見る鳥海山。なお、初冠雪は昨日だったらしいが、
昨年より10日も遅いのだそうだ。

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鳥海山の冠雪と紅葉、そして秋晴れの日曜日、これで人出がないわけがない。
河原宿小屋の前まで戻ってくると、どこぞの高校生軍団などもいたりして、
押すな押すなの大賑わいだ。そして、まだまだ続々登ってくる。
いや、これじゃ癒しどころではなくなってきた。

時計をみると11時、今朝は自宅出発5時半だったから、半日コースの軽登山、
帰って引越し準備が待ってるし、もういいか、そう考えて山を下りることにした。

これが最後の鳥海山、なんて考えると涙が出そうになるほど寂しい。
でも、健康でいればいつかまた帰って来れる。
きっと、また来るから、そう呟いて鳥海山に別れを告げた。

この稿終わり。次はマレーシア引越し準備アラカルトの予定です。
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先日、山好きの知り合いに請われて鳥海山をガイドした。

もちろんボランティアガイドの類であり、
私自身の趣味の範疇ではあるけれども、
ガイドするからには事前にコースや天候を入念にチェックしたり、
あらためて鳥海山の歴史を振り返ってみたり、もちろん高山植物
なども間違えないようにしっかり勉強して準備しないといけないとか、
私自身にとっても大変ためになるのだ。

今までも何組かのグループをガイドしたことがあるが、
それは私の大変良い経験になっている。

今回は、東京方面からの3名、以前の職場の後輩とその山仲間だ。
彼らの計画は、初日、2日で鳥海山を小屋泊でやり、引き続き2日、
3日、4日で朝日連峰を北から南に縦走すると言うものである。

請われたとおり鳥海山の小屋泊と朝日の入り口(大鳥小屋)までを
ガイドして、皆に喜ばれて無事に終了できたことは大変有意義だった。

しかしながら今回の中で鳥海山の頂上小屋のことなど、
鳥海山を愛する一人として、強く思うこともあったので、
今回記事では特にその辺りも含んで綴ってみたいと思う。

コースは、鉾立から御浜神社、御田ヶ原、七五三掛を経て
千蛇谷を登る、いわゆる鳥海山の最もポピュラーなコースである。

当日8月1日は、朝から夏の日差しが強く照りつけ、
登山開始と同時に汗が噴出する過酷な状況。

御浜神社までは風もまったくない酷暑の中、
比較的緩やかな登山道を自炊小屋泊に必要な荷を背負いゆっくり進む。

途中、賽の河原の上部にはまだ雪渓が残っていて、冷たい雪溶け水は
汗だらだらの登山者にとっては、まさに憩いのオアシスだが、
連日のこの暑さじゃこの水場もそう長くは持たないだろうと思う。

御浜到着はほぼ予定どおり。
やはり、暑さのためか皆げんなりしている。
ただ、ここのニッコウキスゲと鳥海湖はいつもながら素晴らしく、
彼方には月山も見えて、皆、大喜びだ。

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鳥海湖を眺めながらゆっくりと休憩をとり、扇子森に向かう。

扇子森頂部の御田ヶ原にはひんやりとした風がそよいでいて、
まるで天空の小路だ。

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天空の小路から次第に鳥海山本体が見えてきた。

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扇子森東斜面から仰ぎ見る鳥海山の新山、七高山と外輪山。

この圧倒的な存在感は感動ものだ。
鳥海山のベストビューのひとつではないだろうか。

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八丁坂の登り返し途中、これでもかとの賑やかなお花畠に出会う。
黄色のニッコウキスゲと真っ白なヤマハハコがとりわけ美しい。

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七五三掛でしばし休憩した後、その先の分岐から千蛇谷に下る。
途中、稲倉岳と中島台方向の森の緑にしばし見とれてしまう。

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そして、そそり立つ外輪の壁を右側に仰ぎながら、千蛇谷をゆっくり登る。
谷を渡るそよ風が肌に当たり気持ちいい。徐々徐々に高度を上げてゆく。

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仰ぎ見る外輪の壁も次第に高さを感じなくなってきて、

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ハクサンシャジンやハクサンフウロ、それにミヤマキンポウゲと
新山に続く溶岩ドームもみえてきた。

ここまでくると御室小屋まではもうひと踏ん張りだ。

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そして、ついに頂上小屋に到着、鉾立登山口から約5時間半。
まぁ、いろいろガイドしながらの登山ツアーとしては、
平均的なコースタイムだと思う。

(ここからは御室小屋泊にて思ったこと)

この後、小屋泊の手続きを済ませ、係のおにいさんに案内されたのだが、
なんといつもの大部屋ではなく、その小屋の前にある個室使いの小屋に
通されたのだ。個室小屋と言えば聞こえは良いが、要するに小さな狭い
小屋なのだ。

えっ?ここなの?
なんで大部屋じゃないの?

見れば、中には既に20人ぐらいの方たちがそれぞれの場所に
陣取っている。狭い小屋だから多分定員ぎりぎりぐらいなのだろう、
皆さん方狭く暗い中で肩寄せ合って、うずくまっている。

ちょっ、ちょっと、おにいさん、今日はなんで大部屋じゃないの?
あっちの大部屋はなんで使わせてもらえないの?と気色ばんでしまった。

実は、昨年、やはりこの小屋でのこと。

その時は大部屋だったけれども、宿泊者が多く大変混んでいて
予定よりも到着がやや遅れた我々は、ぎゅうぎゅう詰めのなか、
2階の最奥の、えっこんなところに8人も寝られないよねって、
言うぐらいのチョー狭いスペースを割り当てられて、
それはそれは全員とても苦しい思いをしたのだ。

皆が楽しみにしていた車座の宴会などまったくできず、
それどころか荷物の置き場もないため、伸ばした足をザックの上に
載せて横になったのだが、隣の顔と10cmも離れない中では
とても息苦しくて、皆朝まで悶々として過ごしたのだ。

鳥海山は初めてと言う人たちをガイドしていた私は、
実に苦しい弁明に追われたのだが、事前に当日の小屋の混み具合を
確認しなかったことなど、ガイドとしての自分の先見のなさを
しきりに反省したのであった。

したがって、今回は昨年の反省点に立って、
事前に小屋の宿泊予約状況を確認し(御室小屋を運営管理する
大物忌神社のHPにて確認できるようになっているのだが、
どういう訳か今年は7月11日で更新がストップしていて、
やむを得ず電話で確認したのだ)、宿泊予約の少ない日をわざと
選んで、この日ならばゆったりと小屋泊を楽しめるであろうと、
あらかじめそのことを参加する皆さんにも説明してあったのだ。

ところがところがである。

大部屋が空いているのに、なんでこんな狭い小屋に押し込むのかとの
当方の詰問に対し、曰く、今日はスタッフが少ないため管理ができない
とのこと。

管理ができないとはどういうことか、聞けば使用後の掃除のことだと言う。

なっ、なにを言うのか、そんな理由で大部屋を使わせないなんて、
使ったら、その後の掃除が大変だから、だから使わせないなんて、
信じられない、まったく驚いた、開いた口が塞がらない。

混んでる時の山小屋のぎゅうぎゅう詰めは当たり前。
そんなことに誰も文句は言わないし、言うものはいない。
しかし、今日は違う。まったくのガラガラ状態なのだ。

大体、こっちは大枚(素泊まりで4200円/人)払った客だぞ、
宿泊者が少ないから、大部屋は使わせずに、狭い部屋に押し込んでおけば
管理が楽だなんて、そんなバカな。。。
客をもてなそうと言うサービスの気持ちが微塵も感じられない。
少なくとも営業小屋ではあってはならないことだ。

お客様の立場に立って懸命にサービスすると言うのが世の常識だろう。
遠路、鳥海山に来てくださったお客様のために、今日は宿泊者が少ないので
どうぞゆったりとくつろいで下さいと言うべきだろう。

それでなくても百名山のなかでも極めて評判の悪い、この小屋のことだ。
特に朝夕の食事の粗末なことは、大勢の方が口コミで書いている。
北アルプスなど名高い山の営業小屋のサービスに比して、恥ずかしいくらいの
お粗末なサービスで、鳥海山は素晴らしいがあの小屋はダメ、という大勢の
山好きを私は知っている。

と言う様なことを、堪らずまくし立てたら、しばらくして、
「大部屋を使っていただいて結構だから、皆さん移って下さい」だと。

なんと言うことだ、結果としてはその晩30名足らずの宿泊客は、
定員150名の大部屋でゆったりと過ごすことができたわけであるが。。

そんなささいなことを、と仰る方もおられるかも知れない。

なので、この件に関し、当日の同宿の方々にご意見を伺った。
中には、私たち同様、わざとガラガラ状態を狙ってやってきたと言う方も
おられて、皆さん、異口同音に私の考え方への賛意を示していただいた。

問えば、小屋の現地スタッフの独断ではなく、上の方の指示なのだと言う。
ならばなおさらのこと。こんなことが日常的に行われているならば、
小屋の評判は山の評価に直結するであろうし、こんなことで鳥海山の評価が
下がるなんてとんでもないことだ。鳥海山をこよなく愛する者の一人として
大変悲しく思う。

大物忌神社さんの小屋の経営管理に携わる方々の意識改革が必要なことは
もちろんだが、併せて周辺自治体や観光協会などの関係各位の問題改善への
ご尽力を強く望むものである。

(以上、小屋泊で思ったこと)

さて、本題に戻るが、翌朝3時半起床で、新山に登頂した。

これは新山山頂から西側のビュー。
早朝午前4時20分、まだ月が見えていた。

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本日の日出時刻は04:31、
七高山越しのご来光を待つが、下層の厚い雲に阻まれてなかなか現れず、
しかし04:42、ついに雲間にご来光を臨む。

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目をすこし南東方向に転じると、外輪山越しに、
栗駒山と神室山がくっきりと見えた。

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新山からの下山途中、
鳥海山固有のチョウカイフスマの群落が岩間に見えた。
いつもこの花に出会うと、あぁ鳥海山の山頂だ、と思う。
この花は、この辺り(頂上小屋の辺り)と外輪山でしか
見られないのだ。

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これはイワブクロとイワギキョウのコラボレーション。
清々しい朝にこのコラボを眺めていると、気持ちまで清々しくなる。

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最後に、これはおまけのショットだが、
御浜神社から賽の河原に至る間の登山道修復工事のため、
バケットをスリングしたヘリが何度も飛来していたのに遭遇した。

工事用の砂利を積み、工事現場に撒いていたが、
作業員の方や関係者の方々のご努力には真に頭が下がります。

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と言う訳で、鳥海山のガイドツアーは無事に終了し、
次なる計画、朝日の縦走に向けての橋渡しもサポートしたのだが、
これは特記することもないので割愛することにします。

ではまた。。
朝、目が覚めると2階の窓から先ず外を見る。
そして鳥海山が見えるかどうか必ずチェックする。

見えていないと例え雨でなくても憂鬱になる。
逆に姿が見えれば晴れてなくても気分はいい。

もし晴れていて山の全景がきれいに見えれば
その日一日ハッピーな気分で過ごせる。

そんな朝の過ごし方をし始めて既に10年にもなる。

しかし、鳥海山を愛し、千回も登ったと言う先達もいる中で、
こんなことを言うと、まだ10年早いと叱られそうだが、
私も鳥海山に魅せられた一人である。

鳥海山を眺め、鳥海山に登り、そして鳥海山に遊ぶ。
何気に遠く眺めるだけの山が、いつのまにか恋焦がれる山となり
気がつけば、その懐に抱かれて、まさに絆(ほだ)されている。

この前鳥海山に登ってから約1ヶ月が経つ。
1ヶ月も経つとなにか気持ちが落ち着かなくて困る。

毎朝毎朝眺めているだけに、もう1ヶ月も来てないね、と
誘われているようで気が漫ろになるのだ。

ところで東北の梅雨明けはまだ発表がない。
発表はないが週間予報をみるともう明けたも同然のようだ。

ここのところ連日朝から鳥海山が見える。
昨日も見えた。裾の方に雲が湧いているようだったが、
前日の予報でも朝から終日晴れマークであったので、
よし、行こうと決めた。

もちろん毎日が日曜日のこの身、誰に憚ることもない。
朝起きて、ザックに山めしとカメラを詰め込み、そそくさと家を出た。

今回のコースは湯の台口コース。
鳥海高原ラインの車道終点がスタート地点だ。滝の小屋、河原宿小屋を経て
心字雪渓からあざみ坂を登り外輪山の伏拝岳に至るコースである。

ここは高原ライン入り口の大台野牧場。
冬場もここまでは除雪されている。積雪期に車で入れる鳥海山の最高標高点だ。

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これは今年3月始めのほぼ同地点での撮影画像。
正面の鳥海山は雲の中で見えないが、
冬から春先の山スキーではここから延々と歩くのだ。

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高原ライン途中からガスの中に入ったが、
終点駐車場ではほぼクリア、予定どおり、07:00登山開始。

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滝の小屋後方の雪渓を登り八丁坂へ。
するとすぐ出迎えてくれたのがミヤマトウキ。
八丁坂一帯を埋めている。

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そして黄色のトウゲブキ。
白いミヤマトウキの中でこの黄色が目立つ。

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これはヨツバシオガマ。
トウゲブキとともに八丁坂に彩りを添えている。

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さらに高度を上げると、これは私の好きなハクサンシャジン。
ツリガネニンジンの高山型で明紫色。山の貴婦人のイメージだ。

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ハクサンフウロ、白山風露と書くそうだが、いかにも可憐な花だ。
この花が好きで鳥海山に通いつめている方もおられるとか。

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ハクサンフウロとミヤマキンポウゲのツーショット。

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八丁坂でゆっくり花を眺めながら時間を過ごし、
08:30、河原宿に到着。

しかし、夏場に八丁坂で大汗かいて、ようやくここに着くと、
目の前には茫洋たる草原と外輪山、そして上部大雪渓から流れくる
手が切れるほど冷たいせせらぎに、皆、目を見張り小躍りして喜ぶ。
まさに、標高1540mの別天地なのだ。

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これは今年4月中旬撮影の河原宿。
トイレ建物の上部からの撮影だが、トイレ建物以外には
河原宿小屋もなにも見えず、すべてが雪の下。

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河原宿小屋の側方から上部のトイレ建物を見上げたショット。
この辺りの雪の深さが推し量れると思う。

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いつも夏場の登山ではこの河原宿でロング休憩を取る。
キンポウゲやチングルマ、そして草原の向こうにはニッコウキスゲの
花畠も見える。いやぁ、ホントに気持ちいい。

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いつまでも休んでいては日が暮れる、とようやく重い腰を上げて、
あざみ坂に至る心字雪渓を登る。

今年は、まだあざみ坂のほぼ登り口まで大小の雪渓が連なっている。

雪渓を登り下りすれば、当たり前だが夏道より平坦で随分楽だ。
それに雪渓を渡る冷たい風は汗ばむ肌に心地良い。
なのに、頑なに夏道を歩く大勢の登山者を見るにつけ、なんで?と思う。

大雪渓の左手の稜線上にはニッコウキスゲの群落が見えていた。

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10:30、あざみ坂の登坂開始。
鳥海山屈指の急登との評判だが、距離が短いので
ここまでくると外輪山はすぐそこだ。

坂の途中に、えっこれはミツバオウレン?と思ったけど、
イワイチョウ?かも知れない。
葉っぱを確認してこなかったので、ちょっと自信ない。

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この前の秋田駒ヶ岳でも見たカラマツソウ。
この白花は、八丁坂のミヤマトウキよりもいい感じ、と私は思う。

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そして華やかなハクサンシャクナゲ。
あざみ坂の辺り一面に咲いていた。

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これはミヤマリンドウだが、花がこれだけ開くと、
えっこれなに?と考えてしまう。
この花は、後にも先にもこれだけだった。
 
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40分ほどであざみ坂の頂部に出た。
この周囲にもハクサンフウロが咲き乱れている。

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これは、あざみ坂頂部から御浜、鳥海湖方向のショット。
雪が消えた鳥海湖が見える。

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11:30外輪山到達。

ここまで4時間半だが、河原宿での休憩が長かったのと、
花にショタレタ(富山弁でのめり込むの意)ため時間がかかった。

でも、体力カウンターはまだたっぷりで、これも定年後1日おきに
ジムに通い、筋トレを続けているせいかな?とちょっと嬉しくなる。

この辺りにはホソバイワベンケイが到るところに見える。
こんもりとした塊が特徴なので、こうやって接写してみると、
あらためて、へえーこんな花なんだと感心してしまう。

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外輪山の稜線を歩き、11:50今日の目標点の行者岳2159mに到達。
と、乾いた砂礫の中にイワブクロを発見した。

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イワブクロの遥か後方に月山を望む。

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いつも思うが、ここからのパノラマは極上だ。

正面には千蛇谷を挟み、新山2236mと頂上御室小屋の台、
そして外輪山の北端には春先の山スキーでおなじみの七高山が見える。

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眼下には、写真に撮るとのっぺらぼうに見えてしまい
高度感が失せてしまうが、実際には鋭く切れ落ちる深い千蛇谷だ。

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そして目を反対側に転じ南方向を望む。
ちょっと雲が湧いてきました。

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山ランチのメニューは、イカめしと精のつく(?)鰻たまご雑炊、
それにフルーツとアルコールフリービールがついた豪華版だ。

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最後にコーヒータイム、これで山ランチも完璧だ。
雲がどんどん湧いてきたので、まもなく下ろうと思う。

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案の定、あざみ坂を下りて雪渓に降り立ったところで
完全にガスに巻かれ、視界はほぼゼロ。しかし、ここは私の庭だ。
まったく心配は要らないのだ。
目を瞑っても歩けると豪語しているほどだから。(笑)

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ほら、もうガスが晴れてきた。
なにか幻想的な風景だ。

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振り返れば、スイスイと楽に下りてきた大雪渓が
きれいに見えていた。

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河原宿小屋まで来たら雲は取れ、もうすっかり晴れ。

またしてもそこで湯を沸かしコーヒーを淹れ、そして
目の前の清冽なせせらぎで、身も心も洗い流し、
ああ、今日もいい山だったと、満足して八丁坂を下りてきた。
いよいよ夏山シーズンの到来だ。
鳥海山も7月1日に夏山開きとなる。

でも、この前、山スキーで登ってから、雪があっと言う間に少なくなり、
なぜか無性に寂しい気がしていたが、ここまで消えてしまうと、
逆に開き直ると言うか、ならば夏山を精一杯楽しもうという気になってきた。

となると、山開きまではとても待てない。
今年はあと何回山に入れるかなどと考えていると、この時期の天気の良い日を
見逃すわけにはいかない。鳥海山の花開きはもう始まっているのだ。

よし、行こうと決心しすぐさま鉾立登山口へ。
昨日は、日本海から鳥海山を眺めた。
今日はその鳥海山に登る。なんと幸せ、贅沢なことこの上ない。

登り初めてまもなく、奈曽渓谷の緑が目に飛び込んでくる。
この時期、残雪の白と樹の緑のコントラストが美しい。



登山道傍のナナカマドの花。
秋には真っ赤な実をつけ、紅葉の主役となる。



これは、里にもどこにもあるタニウツギの花。
あまりに多く目にするので、誰も見向きもしないが、
こうして改めて見てみると、とても上品で美しい花だ。



これはタニウツギの白花。
ピンクに比べ数が少なく珍しい。



そして、わが自宅の庭にも咲いているマイヅルソウ。



ノウゴウイチゴの珍しい7枚花。
野いちごの代表格で実は酸っぱくてうまい。



これはウラジロヨウラク。ツツジ科の樹の花で淡紅色の壷型だ。



花の名前が判らず、あとで調べてみたら
ツバメオモトと言うらしい。



自宅の庭にもあるシラネアオイ。自宅のものは既に花が落ちたが、
ここのシラネアオイは今が盛り。



黄色の可憐な山野草、オオバキスミレと言うのだそうだ。



これはツツジ科のアカモノ、別名イワハゼと言い、夏に赤い実をつける。
食べれるそうだ。



これはゴゼンタチバナ、登山道のあちこちで目に付く花だ。



ショウジョウバカマ、たしか家の庭にも咲いていた、と思う。



これがかの有名なイワカガミ。葉っぱをみると良く分かる。
ピンク色の可愛い高山植物だ。登山道の主役のひとつ。



おっと、夏道を覆うように雪渓が現れた。
雪はザクザクと柔らかく、軽アイゼンも必要ないように思えるが、
せっかく持ってきたのだからと登山靴に装着して登る。



登り初めから約2時間、御浜小屋到着。
前回山スキーで来たときより随分雪が少なくなったが、まだまだ鳥海湖は雪の中だった。



そして、ここから始まるお花畑。
先ず目に飛び込んでくるのは、真っ白なハクサンイチゲの群落。
鳥海山の高山植物の先陣をきって、一斉に咲き始めた様子だ。



こちらはハクサンイチゲの花の赤ちゃん。
懸命な姿が可愛くいじらしい。



ハクサンイチゲの隣には黄色のミヤマキンバイ。
ちいさく可憐な花だが、一面の黄色が目にも鮮やかだ。



ハクサンイチゲと良く似た白い花だが、
イチゲより小さく、花びらが丸い形のチングルマ。
これも鳥海山のお花畑の代表選手なのだが、
この時期はまだ少ない。
夏から秋にかけては綿毛に変身する面白い花。



扇子森への途中にミネザクラも咲いていた。



扇子森から鍋森と笙ヶ岳三峰方向を望む。



扇子森頂部の御田原から千畳ヶ原方向を望む。
あまりの気持ち良さに、本日の登山はここまでと決め、
お花畑の中で日向ぼっこと山ご飯にする。
時々ガスが太陽を隠し、お陰で急に体感温度が下がったりもするが、
そんな時は湯を沸かし熱いコーヒーを飲む。

こんな贅沢、山好きでなけりゃ味わえないよ、惜しいよねぇ。



鳥海湖を臨む長坂道から見る新山と外輪山。
なかなか上部の雲が晴れずにしばらく待ってシャッターを切った。



そして、長坂道分岐からまだたっぷりの雪渓をほいほいと下って、
鉾立への夏道に合流し下山したが、なんと言っても今日の収穫は
一面のハクサンイチゲ、まだ咲き始めから間もない頃と思うが
グッドタイミングだった。

来週ぐらいから梅雨に入るかも知れない。
さて、次なるお花畑はいつになるのかな、
でも、やっぱり自由って最高だよね。
早いものでもう5月も半ばとなる。
鳥海山の雪形の種まき爺さんもすでに出現し、
庄内平野の田植えは今が盛り。

モノクロの稲田が淡いグリーンに色づいたと思う間もなく、
あっという間に、緑のじゅうたんに変化してゆく。

心休まるいつもの里の風景だけど、
私としては、鳥海山の雪がどうも気になる。
今年の雪は多い、と先日も安心して山を下りてきたのだが、
眺めていると日一日と雪が少なくなっているようで、
なんとなく落ち着かないのだ。

朝が来て、いつものように二階の窓から、
山を見てみると、お、全部見えてる。
雲はあるがかなり高い、予報も問題なし、ならば行こうと
思いついたものの、なんか体の調子が変、というか、
夕べから歯が痛み出して、歯医者さんに行かなきゃなぁと、
思っていたのだ。それに、頭も痛むような?熱もあるのか?
これって風邪か? と一瞬迷ったが、いやいや、これぐらい
気力でなんとかなるのだ、と決心はGO。

すぐさま道具一式とザックを車に積み込み、
決心から30分で出発。
我ながら決心の速さと、行動の素早さは、まだまだ負けてないなと
自己満足の世界なのだが、今までこれで何度痛い目にあったことか(笑)。

今日は、鳥海山の裏側(秋田の人たちごめんなさい、こちらから見ると
こっちが表であっちが裏? まっ、そんなことどうでもいいか。)から登る。
なので秋田県は由利本荘市(以前は矢島町だったが合併でそうなった)の祓川登山口へ。
朝もやのなかの鳥海山を右手に見ながら、一路矢島へ矢島へと車は走る。



鳥海高原矢島花立牧場公園のユースプラトーのバックに、
朝日に輝く鳥海山が見える。



うねうねと車を走らせていると、
標高500~600mの道の左手に一面の水芭蕉、
ちょっと車を停めて外に出てみた。
朝の冷気が火照った肌に心地よいが、これって熱のせいかな?



7時ちょうど、祓川駐車場到着。
んっ、空いてる。なんで? と思ったが今日は月曜日、平日だよ。
娑婆では皆働いているのだ、これだよ、これ、と毎日が日曜日の
我が身の気楽さにあらためて満足しつつ、準備完了。

7時30分、登山開始。
もちろん、頂上までシール登高に問題はなさそうだ。
祓川ヒュッテまで準備運動しながらゆっくり歩き、
それからよっこらさと斜面に取り付いたが、んー、なんか息が切れるな、
全体にだるさもある、最初の斜面を勢いで直登したみたが、
いやー、きついのなんのって、やっぱり今日は無理なのかと
自問自答しながら、それでも行けるところまで行こうと
ゆっくり歩く。





いつの間にか、空は雲が去りすっきりのブルースカイ。
そよ風も心地よく、身体の調子以外はベストコンディションのよう。



前後にはちらほら山スキーヤーも見え、
もうすでに何度も登っているコースなので、
愛用のガーミンVISTA Hcxを頼ることもなく、
安心のシール登高だったのだが、
やはりつらい、息が続かない、脚が重い、
いつものどんがめスローペースがさらに遅くなる。
ちょっと歩いては止まり、また歩いては止まる。



無理かなー、ダメかなーと何度も何度も考えた。
自己の健康管理もできず、万一の時になんと言い訳するのだ?
これこそ、私が忌み嫌う自己本位の最たるものではないか・・

でも、もしかして、いやきっと、これが最後の山スキーだろう。
まだ、100%決まった訳じゃないけど、次の冬が来る前に
マレーシアに行くのだろう、そうなったら山スキーなんて
できるわけがない。
わざわざ神田神保町のさかいやスポーツで買い揃えた愛用の道具たちも、
持っていても使い道がなくなる、というか、持って行けないだろう? 
ならば処分するしかないんじゃないのか、
などなど、様々な思いをめぐらしながら、それでもゆっくり歩き、
ほとんどの人達に追い抜かれはするけど、
少しずつ、少しずつ高度は上がる。

いつの間にか、七ツ釜避難小屋も通過して、
頂上が目の前に見えてきた。



気温が上がり、風も止んでいる。
汗が一気に出た。これだけ出るかというぐらい出た。
もちろん水分もどっさり補給した。ザックの中の2ℓも残り僅か、
でも心配は要らない。
なぜなら、ここ数日でできたものと思われる、赤ちゃんえびのしっぽが
コースのあちこちに見える。ちょっとつまんで口にふくむと
実にうまい。真っ白で透明で冷たくてきれい、いや、うまい。



途中途中でELVを確認し、頂上のETAを計算する。
この調子だと、1時は過ぎるかな、いや2時かな。
相変わらず身体はきついが、このままゆっくり歩けば、
いつかはなんとか頂上に立てる。





なんにしても、これがラストの山スキーだとしたら、
頂上まで行き着かずに引き返したら、絶対後悔すると思うから、
やっぱりこのまま行こう、ゆっくり行こう、日が暮れるまで
帰れれば良いのだから、このまま行こうと、あらためて決心N/C。

空はどこまでも青く、
この時期にしては白くきれいな斜面が頂上まで続いている。
GWの最盛期には、この巨大なバーンを山スキーヤーが埋め尽くす。
しかし、今日は平日、数えるほどの山スキーヤーしかいない。
なんとラッキー、脚取りは重く、頂上直下の急斜面では、どんがめが
もうほぼカタツムリ状態だけど、七高山はそれでも徐々に徐々に近くなり、
そして、ついに、2時ちょうど、ELV2225m到達。





えーっ、6時間半だよー。前回は確か4時間ちょっとだったから、
2時間半も遅い。いやーっ、だけど、やったね。
ラストの山スキーだからと思って、頑張ったんだよーって、
だれも誉めてくれないだろうからと、我が身を自分で誉めた。

七高山から見る目の前の白く大きな新山、
真下には鋭く切れ込んだ深い谷と、山頂小屋の台。
新山の右手には、春の雪で化粧したかに美しい千蛇谷から中島台。
春霞のせいで視界は良くないが、日本海もうっすらと横たわる。







2週間前はあの新山に登った。
そして、あのバーンをあのように滑って下りた。
そう思うと感慨深く、やはり、今日も登ってよかったとつくづく思う。

3時、そろそろ帰る時間。
シールを外し、滑降モードに。
2220mから1800m程度まで一気に滑る。
周りには誰もいない。
端が見えず終わりのないような斜滑降をしていると、
この巨大で真っ白なバーンを独り占めしていることの
幸福感と満足感があふれてくる。







あっというまに、七ツ釜。
しかしここまでくると例の黄砂が雪を腐らせ、
ブレーキ雪と走る雪が斑状に出現する。
今日は肝心の春用ワックスをサボってしまったので、
いやすべり難いのなんのって、何度も前につんのめりそうになって
それを踏ん張って堪えるから、最後はもう腿がぷるぷる。

それでもなんとか、4時前に駐車場帰着し、
疲れたー、いや、ホントに疲れました。

でも、いっぱい汗出したせいか熱っぽくはなくなった。
歯はまだちょっと痛むが、これは明日ぐらい歯医者さんに
行ってみよう。
帰りに、にかほ高原途中の展望台から、
日本海に浮かぶ飛島がやけにくっきり見えていた。



これが最後の山スキーだったかも知れないけど、
うん、悔いはないなと考えた。
昨日久しぶりに鳥海山の新山に登ってきました。

鳥海ブルーラインの除雪が終わり、
山形の吹浦と秋田の象潟を結ぶ山岳絶景ラインが
予定どおり4月27日に開通したのです。
例年、ゴールデンウィークにあわせ開通するので
バックカントリー好きは、皆この日を待っている。

今年は、1月、2月、3月と5回ほど登ったけど
このブルーラインの開通までは、除雪の関係で
車でいける最高標高点が酒田市八幡の大台野牧場なので
標高500mから歩かなきゃいけない。
思うほど体力のない団塊人間にとってはかなり厳しいのだ。

だから、いつも意気込みとは裏腹に
滝の小屋とかせいぜい河原宿小屋あたりで挫折する。

今年は、2月に月光川ダムの奥にある三の俣スキー場
からも登ってみたけど、あそこは標高300m程度だから
ますますきつい。
天気も良くて、例年は邪魔なブッシュも大雪のお陰で
さほど気にならずに頑張って歩いていたのだが・・・
膝近くまでのラッセルには到底体力がもたず、
目標の月山森どころか標高800m程度の鈴木小屋で
体力エネルギーの打ち止め。
帰りは深雪にスキーをとられほとんど雪ダルマだったけど、
それでも手つかずの雪山で一人楽しかったのだ。

話を元に戻します。
ブルーラインが開通したと言っても、まだしばらくは
朝8時から夕方5時までなので、朝早くから登ろうと
思うと、前日の車中泊が必須なのです。

と言うことで、私も28日の夕方、ゲートが閉まる前に
鉾立の駐車場に進出、先着の10数台とともに車中泊を
決め込んだ。

翌朝、5時起床し6時登山開始のつもりが、
やや準備に手間取って、30分遅れで出発。

空を見るとすっきり快晴・・・でもないか。
花ぐもり模様だけど、予報はばっちりだし心配無用。

でも、この鉾立コースって、山スキーヤーにはあんまり
人気がない。なぜなら、しばらく夏道をスキー担いで
歩かなきゃいけないし、もちろん下りも同じだから、
その辺知ってる人たちは、ほとんど大平登山口近くの
登り口から直にシール登高でスタートしようと考える。

だから、そこの駐車場ってゆうか、駐車スペースは
いつも満車。朝いちでゲート通過しても前日からの
泊組?ですでに残席僅か。だから、ゲートオープンは
よおいドンの競走なのです。

かく言う私自身、毎年GWは大平から登っているのだけど
今年はなぜか、鉾立にしようと考えた。
なぜ?ひょっとしたらマレーシアMM2Hのせいかも知れない。
山スキーはこれが最後かなって?

いやいや、まだチャンスはあるでしょ、祓川からなら
5月いっぱいOKじゃないか、
でも、もしかしたらって感じているのかも。

鉾立駐車場からスキーを背負い、ちょっと上の展望台から夏道を
しばらく歩く。岩や石道と雪道が交互に現れ、注意しながら歩く。

登り始め30分ぐらいいつも感じることだけど、
こんなにきついのに、山登りなんかなんでしてるんだろうって。
でもしばらくすると身体がなれてくるせいかそんな気もなくなり、
誰もいない静寂の世界に浸る。それが楽しい。
ようやく夏道から外れ、シール登高開始。



前には誰も見えない、後ろを見ると遥か下方に2、3人。
でも右手の大平方向からは結構多い、全部で10人以上は見える。



8時30分、予定どおりに御浜小屋到着。
この辺で大平コースと合流なので、結構な人数が小休止してる。
鳥海湖を覗いてみるとまだ雪がたっぷりあって、
やっぱり今年は雪が多いなと思う。







風もなく温かで心地よい気分だけど、ゆっくり休んでもいられない。
何組か先に出た。その先を見渡すと、
扇子森上部にどうやら雪が切れているところがあるらしい。
スキーを背負う姿が見える。
なので、左側から稲倉岳をやや下方に見ながら迂回気味にトラバース。



陽もうっすらとさしてきたけど、視界はあまり良くない。
日本海も秋田方向も霞んで見える。

先を急ごう。扇子森の鞍部から七五三掛に至るコースに
何組かの山スキーヤーが見える。今日はみんなペアだね、
単独は俺ぐらいかな、なんていろいろ考えたり、自問自答したり
しながらひたすら進む。

9時40分、七五三掛、標高1780m地点。
ここから千蛇谷コースと外輪コースに分岐となる。
先行者のうち、何組かが外輪の方向に進んでいる。
千蛇谷への渡りがやや気になるが、ここは迷わず千蛇谷へ。



皆ここでスキーを担ぎ、一列になって慎重に渡る。
夏場も思うけど、ここは油断できないよね。左下方をみると絶壁?
だもんね。よろけて滑落でもしたら大怪我間違いなしだから、
そうなったらヘリ救助とかになるだろうし、迷惑かけるし、
家族にも怒られるだろうし、なんていろいろ考えながら
ようやく渡り終えてホット一息。

ここからは千蛇谷の緩い勾配を
ゆっくりとシールで進む。
いつものどんがめスローペースだから、
若い人たちから追い抜かれることも多いけど、
まあこの年だから無理しないでおこう、
こっちは飽くまで健康登山なんだからね、
などと自分に都合いいようにつぶやきながら
ゆっくり時間をかけてすすむ。
単独行は、だから気が楽なのさ。







途中、暑くなったり寒くなったり、
その度にアウターを脱いだり着たりしながら歩く。
進行方向右側にそそりたつ外輪の壁も、だんだん高さを感じなく
なってきて、11時15分、頂上小屋のある台の直下に到着。
でも、今回は、このまま谷を進み右から左に廻り込む形で
新山を目指す。雪がたっぷりあるのが嬉しい。
急な斜め勾配に、スキーアイゼンも効かず、ここは慎重に
時間をかけて登る。



そしてようやく、12時ちょうどぐらい、標高2230m点に到達。
厳密に言うと頂上2236m地点は、眼の前の岩山だけど、
ここで十分。対岸の七高山もほぼ目の高さに見えるし、
何組かの人影も見える。あっちは、祓川から登って来たんだよね。



急に風がでてきて体感温度も下がってきたため、岩陰で着込み、
そして昼食タイム。これがいわゆる至福の時なんだよ。
疲れたーって思うより、やったーっていう達成感。
毎回、このために登るんだろうと思う。
周囲にはなんでそんなきついことするのって
いつも聞かれるけど、これなんだよ。
でもこれって、登らない人にはわからないだろうな。



頂上周辺には、数えてみると10組程度、皆思い思いのポーズで
休んでる。至福のサミットランチ?を終え、滑り始めるグループも。

帰りの千蛇谷の大滑降を考えると、滑る前からわくわくどきどき
するけど、七五三掛への渡り廊下もあるし、扇子森の登り返しも
あるのだから、調子乗りすぎて転んで怪我でもしないように、
ここは気を引き締めながら、
よしって気合を入れて、下山というか、1時ちょうどに滑降開始。



思ったとおり、千蛇谷の滑降は素晴らしい。雪質もすこぶるいい、
ところどとろに薄いクラストもあるが、快適にスキーが走る。

もったいなくて、途中何回かにわけて滑りおりてきたけど、
それでもあっと言う間に千蛇谷最下部のゴール?地点に到着。

振り返れば頂上直下から続く千蛇谷のロングスロープと
外輪の壁がとても愛おしい。いやぁ、良かったとつくづく思う。

その後、七五三掛への渡り廊下も
扇子森の登り返しもなんとか無事に通過して、
そして、最後の夏道も慎重に歩き終え、
本日の山スキーはこれで終了。
時計を見ると、3時30分でした。

以上、鳥海山春スキーの項、終わり。